あおもり伝統野菜 あなたは「筒井派? 笊石派?」

郷土の食文化に育まれた伝統野菜


みなさんは「伝統野菜」を知ってますか。

伝統野菜とは、日本各地で古くから栽培され、採種を繰り返していく中で、その土地の気候風土にあった野菜として定着してきたものです。

これらの野菜は在来種とも呼ばれ、40~50年前までは各地で当たり前のように食され、地域の食文化とも密接に関係してきました。

青森市にも「筒井(つつい)紅(あか)かぶ」、「笊石(ざるいし)かぶ」という2つの伝統野菜があります。

「筒井紅かぶ」は、主に筒井地区で栽培され、皮は濃い赤色で茎まで赤く、内部はほんのり赤くて、一部濃い赤色の部分があります。食感は硬めで、生で食すとやや辛味があり、加熱すると甘みが出ます。酢漬けにすると鮮やかな赤い漬物になるのが特徴です。

「笊石かぶ」は、主に久栗坂地区で栽培され、同地区が「笊石」と呼ばれていたことが名前の由来と言われています。皮は濃い赤色から紫色で、茎は緑色、内部は白く、一部ピンク色の部分があります。食感はやや硬めで、生で食すと甘みがあり、酢漬けにするときれいなピンク色で独特の辛味が出ます。

この2つのかぶは、津軽の郷土食である赤かぶ漬けの原料として戦前から栽培されてきました。

筒井紅かぶは茎まで赤い
笊石かぶは茎の断面が緑色

​農業スタイルの変化と在来種の衰退


しかしながら、伝統野菜と言われるこれら在来種は、歴史の流れの中で、その姿を消しつつありました。

戦後、経済の復興から高度成長期に入ると生鮮食品の安定的な供給が求められるようになり、本来、旬に応じて収穫され、大きさや味には多少のバラつきが出て当たり前の野菜に対しても、均質化・規格化が求められるようになりました。

在来種は野菜の揃いが悪く、手間がかかり、その地域の気候風土に合わせた独自の栽培技術を必要とする品種もあるほか、採種をするために一部を収穫せずに残しておかなければならず、畑の生産効率を下げてしまいます。

一方、品種改良された野菜は、野菜の形や大きさの揃いが良く成長も早いことから、同時期に一斉に収穫でき、また、種子を購入するため採種の手間が省け、生産効率を高めることができます。

消費者の均質化・規格化のニーズと農業者の生産効率のニーズが合致し、多くの品種は瞬く間に品種改良された野菜にとって変わっていき、農業のスタイルは「在来種で自家採種」から「品種改良された野菜で毎年種子を購入」の時代へと変わっていきました。

 これにより、日本の野菜は、そのほとんどが在来種から品種改良された野菜に移行し、在来種は地域の農家が自家需要で栽培するにとどまり、中には消滅してしまった品種も数多くありました。

2人の生産者が繋いだ青森の食文化


青森市の伝統野菜も例にもれず、消滅の危機をむかえます。古くから漬物用の赤かぶとして栽培されてきましたが、品種改良された野菜の台頭に加え、漬物需要の低迷もあり、生産者は減少の一途を辿り、2013年頃には生産者がそれぞれ一戸だけになっていました。

筒井紅かぶの生産者、川井幸さんは、周囲の人に「筒井紅かぶでねばあの鮮やかな色は出ない」と、笊石かぶの生産者、白坂ミヤさんは、「笊石かぶの漬物のあの辛味がいい」と言われ、これまで栽培を続けてきたと言います。

この2つのかぶを消滅させることなく伝承していくため、市内の若手農業者を中心として「あおもり伝統野菜研究会」を発足し、県の支援を受けながら栽培技術のマニュアル化や、栽培講習会を実施して栽培技術の確立に取り組んできました。

 一度は消滅寸前だった青森市の伝統野菜は、若手生産者らにより引き継がれ、笊石かぶの発祥地である久栗坂地区の地元住民も生産者に加わり、2021年度末時点では生産者17名にまで着実に増加してきました。

朝早く収穫した方が長持ちすると話す小泉憲一さん
大きさを確かめながら収穫する川村美紀さん

​赤かぶ本来の魅力を漬物で味わう


あおもり産品販売促進協議会では、市と連携して栽培講習会や採種講習会を開催し、生産者の栽培技術向上を推進するとともに、筒井紅かぶと笊石かぶを「あおもり伝統野菜」として、知名度向上と需要拡大に取り組んでいます。

その取り組みの一つとして、古くから漬物用の赤かぶとして伝承されてきた2つのかぶ本来の魅力を味わっていただくため、筒井紅かぶが栽培されてきた筒井地区近隣で、店主自身も農家をしながら採れたて野菜の直売やお弁当販売を行う産直施設「アグリショップぶんべい」と、笊石かぶが栽培されてきた久栗坂地区にほど近い浅虫地区で地場産食材をふんだんに使用した食事を提供するレストラン「浅めし食堂」にご協力いただき、2つのかぶを使った「赤かぶ漬け」を加工販売・提供していただいています。

アグリショップぶんべい代表の佐藤範子さんは、お姑さんから受け継がれた漬け方を基本に、短命県返上の取り組みに賛同して塩分控えめの漬物に仕上げています。

また、浅めし食堂店長の三国亜希子さんは、「笊石かぶは貴重なかぶ、たくさんの人に知ってもらいたい」と、時期になると特製の赤かぶ漬けを定食の一品として提供しています。

晩秋に収穫し、冬に漬けて春までかけて消費されてきた雪国津軽伝統の保存食である赤かぶの漬物、無くなりしだい提供終了とのことですので、ぜひ一度味わってみてはいかがでしょうか。

取材の際に漬け作業を実演してくれた佐藤代表
完成したばかりの漬物を披露してくれた三国店長

地産地消[青森]から地産外消[首都圏]へ


この度、両店舗で加工製造された赤かぶ漬け14種類の試食・販売を行う「あおもり伝統野菜フェア」を1月27日(金)・28日(土)の2日間、東京都港区赤坂に店舗を構える青森市のアンテナショップ「AoMoLink〜赤坂〜」にて、開催します。

ひとことに赤かぶ漬けと言っても、甘酢漬けから塩・米麹・米を漬床とした三五八漬け、りんご酢漬けなど、種類は様々。2店舗が筒井紅かぶと笊石かぶをそれぞれ漬けているので、かぶの違いや店舗による味の違いなど、いろいろな楽しみ方ができます。漬物は全て税込500円のワンコインなので、お好みに合わせて食べ比べしてみてはいかがでしょうか。

また、希少な2つのかぶの青果も数量限定販売します。漬物名人の佐藤代表直伝の簡単漬物レシピほか、赤かぶを使用した調理レシピも併せて配布します。

近年、「地産地消」の推進に伴い、在来種は「伝統野菜」として、単なる「地産地消」の農産物としてだけでなく、地域の特色が色濃く反映されたスローフードとして注目を集めています。地元に根付いた2つのかぶとその郷土の味を首都圏で楽しむことができる本フェアへぜひ足をお運びください。

あおもり伝統野菜を使用した商品に貼付されるシール

アグリショップぶんべい

〒030-0841 青森市奥野4丁目15-32

TEL 017-775-2372

営業時間 火~金 9:00~17:00

    (土日祝は14:00まで)

定 休 日 毎週月曜日

浅めし食堂

〒039-3501 青森市浅虫字螢谷65-34

TEL 017-752-3322

営業時間 11:45~14:00

定 休 日 水曜日

URL https://asameshi-shokudou.com/

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